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「ヴァルキュリア戦記」15 [Stellaris AAR]

対ヤル連邦戦争①(2281年~)

1.思いがけない緒戦
 ヤロニアンたちの、いかにも排他主義者らしいかたくなな態度のせいで、やむを得ず開戦の火ぶたを切ったヴァルキュリア神聖帝国は、国境の北東要塞に駐留していたアメジスト・ガーネット両主力艦隊と地上侵攻軍に出動を命じた。

 宣戦布告を行う前から、ヴァルキュリア連合艦隊が恒星シプリムの重力井戸を離れてヤル連邦領ビブハム星系へ続くハイパーレーン突入ポイントに向かっていたという報道がヤル連邦内では盛んに繰り返されているようだが、根拠のない言いがかりである。キーアⅡ世は帝国外務省を通じて、最後まで平和的説得を諦めていなかった事を、ここで改めて主張しておく。
 このような誤解が生まれたのも、ヴァルキュリアの艦隊行動が実に迅速であるせいだろう。先の対ツムバトル略奪艦隊との防衛戦で大活躍したドルン=タル・オルン提督の強い進言を受けて、ヴァルキュリア軍は「早期展開」ドクトリンを採用していたのだ。戦闘艦や陸軍輸送艦の各クルーたちは機動性を最優先にした再訓練をすでに受けており、艦隊戦だけでなく星系間の巡行時にもめざましいスピードアップを実現しているのだった。
早期展開ドクトリン.jpg
 そんなわが軍とは反対に動きが鈍重なヤル連邦軍は、国境のビブハム星系に艦隊も、ろくな防衛力も配置しておらず、ヴァルキュリア連合艦隊は易々と制宙権を確保。地上侵攻軍が惑星ロンサムリトートに降下するのを支援すべく、アメジスト艦隊が軌道上からの爆撃を開始した。
 惑星ロンサムリトリートには目立った陸軍施設もなく、防衛軍もたった3個連隊だったため、ガーネット艦隊は惑星爆撃に参加せずに、次の目標アードスカー星系へと単独で進撃した。今回の戦争は、オクシナベラ相手にやったような数星系を掠め取るための領域紛争ではなく、一国丸ごと屈服させる全面戦争なのだ。もたついていたら戦争目標を達成する前に、こちらも疲弊して休戦となってしまう恐れがあった。

 ガーネット艦隊が移動を開始したまさにその時、索敵部隊から急報が入った。ヤル連邦軍の艦隊「レッド・タイド」が、アードスカー星系でこちらを迎撃する構えだという。
 報告によると、「レッド・タイド」は駆逐艦9隻、コルベット29隻の大艦隊らしい。軍情報部の分析だと、その戦力評価値は4,400だ。間違いなくヤル連邦の主力だろう。
 「うちの艦隊の一回りも下ですな・・・我々だけでやれます。」と、情報を受け取ったガーネット艦隊提督ドルン=タル・オルンは、きっぱり軍司令部にそう答えた。
 聞けば「レッド・タイド」は、66歳と老境に差し掛かっているのにほとんど実戦指揮経験のないお飾り提督が率いてるらしいではないか。争いを忌避する平和種族ヤロニアンの中では珍しく軍務に熱心だというだけで、主力艦隊を任されている凡庸な男に、この俺の相手が務まるのか? 現在(いま)をときめく奇才提督ドルンは、そう高を括っていた。
 2282年、2月16日。自信に満ち溢れた司令官の指揮の下、ガーネット艦隊はアードスカー星系にてヤル連邦軍と交戦に入った。
 
 結果は、惨敗だった
 たった1ヶ月強の戦闘で、ガーネット艦隊の戦力の半数にあたる6隻もの駆逐艦と4隻のコルベットが轟沈! 他に駆逐艦3隻が損傷のため撤退しており、残存艦もほとんどが中~大破していた。
 もはや全滅も目前となったその時、呆然としかかったドルン提督の肚の底に残っていた判断力が、「全艦緊急離脱」の命令を下させた。
20180930192350_1.jpg(圧倒され、ボロボロになっているガーネット艦隊。)
 ブラインド・ジャンプの閃光と共に味方艦隊がすべてかき消えたのを目の当たりにして、インルー=タル・グン将軍はさすがに慌てた。惑星ロンサムリトリートをわずか2週間で陥落させた彼女たち地上侵攻軍は、休む間もなくまた輸送艦に乗り込んで、艦隊戦真っ最中のアードスカー星系に侵入していたのである。今にして思えば、輸送艦団を送り込むのは艦隊戦が終結してからにすべきだったのだが、戦争の長期化を恐れて何事にも気が急く軍司令部は、足の遅い輸送艦に早めの行動を強いていたのである。
 そもそも、「自分たちの艦隊が必ず勝利する」という根拠のない慢心からして間違っていた
 艦隊戦については素人であるインルー=タル・グン将軍も、自分たちの無力な輸送艦に敵艦隊が攻撃を向け始めるやいなや、ブラインド・ジャンプによる撤退を即決した。だが、冷静沈着な彼女の素早い決断をもってしても、不運な1隻の輸送艦が大勢の奴隷兵たちもろとも火だるまにされるのは避けられなかった。
 このブラインド・ジャンプによる事故で、ガーネット艦隊は駆逐艦1隻を、地上侵攻軍は輸1隻とその兵員をさらに喪失した。
 対して、ヤル連邦艦隊の損失は6隻。艦種の内訳が不明なのでその多寡を論じることはできないが、損失の面だけみても明らかに我々が負けていることだけは確かだった。

2.戦争の趨勢
 アードスカー星系艦隊戦の結果は、すぐに銀河中が知るところとなった。
 多くの有識者から「艦隊戦力比で劣等のヤル連邦が俄然不利」と見られていたこの戦争も、たった一度の艦隊戦で評価がまるで変ってしまっていた。
 いや、実はヴァルキュリア艦隊が辛酸をなめたのは、アードスカー星系だけではなかった。その直前にベータ・ヒドリ星系へ進軍していたアメジスト艦隊も、8基のミサイル砲台でガッチリと要塞化された敵宇宙軍港を沈黙させるまでに、実に10隻!ものコルベットを沈められていたのだ。駆逐艦に撃沈はなかったとはいえ、あまりに予想外の事態であった。
20180930191622_1.jpg(戦況報告画面。上のバーで、防御側のヤル連邦が「優勢」と見なされているのがわかる。ベータ・ヒドリとアードスカーの宇宙戦だけで、ヴァルキュリアが抱える戦争疲弊度42%のうちの27%が発生してしまっている。)

 ヴァルキュリア宇宙軍史上初の艦隊敗北に直面して、首星フレイアの門閥貴族連中がまた大騒ぎを始めていた。あられもなく「国家存亡の危機」を叫ぶ彼らの醜態を目にして、物を知らぬ奴隷の幼子までが「まける、まける!」と訳も分からず囃し立てた。
 だが、賢明にして豪胆な戦乙女ぞろいの帝国首脳部は、このくらいではパニックになどならなかった。むしろ、覚悟が決まった。先述した通り、今回は全面戦争なのである。国力のすべてを注ぎこんで、引きこもりイソギンチャクどもと徹底的に戦うのだ。
 全土のあらゆる公共事業が停止され、産出されるエネルギーと鉱物資源が残らず軍艦建造に回された。ヒステリックな「徹底抗戦」の世論に乗じて、上流から中流階級の若者たちはこぞって宇宙艦隊養成所に殺到し、健康な奴隷は陸軍訓練キャンプへ次々と送り込まれた。

 最初こそ、アードスカー星系でも無謀な突撃戦術を敢行してあえなく大敗したドルン=タル・オルン提督ひとりに非難が集中していたが、プーレス=タル・ヤグ提督のアメジスト艦隊もベータ・ヒドリ星系で大損害を被った事実が知れると、より冷静な戦闘分析が行われるようになった。
 答えは、おそらくヤロニアンたちの兵器設計思想にあるようだった。前2会戦で敵の主力兵器だった「ダイビング・クレイト」級コルベットと宇宙軍港防衛施設は、いずれもミサイル兵器を主兵装にしていた。宇宙軍港とその周囲を固める「ブオヤント・バーナクル」級防衛プラットフォームにいたっては、ミサイル砲台以外の武装がない徹底ぶりである。
 ヴァルキュリア軍艦艇は、防御面で物理装甲よりもエネルギーシールドを重視している。造船施設での修理が必要な物理装甲よりも、エネルギー再充填だけで強度が回復するシールドの方が継戦能力に優れており、我々の「早期展開」ドクトリンに適うからだ。
 これは最悪の組み合わせだった。ミサイルはエネルギーシールドを通り抜けて、こちらの物理装甲と船体に直撃してしまうのだ。アードスカー星系艦隊戦からなんとか生還したヴァルキュリア駆逐艦「バフリン」「ヤンゴルダ」の戦闘ログによると、両艦とも75%ものシールド出力を保ったままで船体崩壊の一歩手前まで追い込まれていたのが確認できた。
 しかも、ヤロニアンの軍事開発者たちは、反物質ミサイル弾頭をすでに実用量産しているようだった。これは、ミサイル兵器を軽視するヴァルキュリア軍の核分裂ミサイルより2世代も進んだ強力な兵器なのだ。
 では、ミサイルに対抗する手段は何か? ごく普通の戦術家なら即座に「対空砲」と答えるだろう。弾幕で飛来するミサイルを撃墜するのである。だが、駆逐艦より大型の軍艦技術を持たないヴァルキュリア艦隊にとって、対空砲の搭載は難問だ。既存の駆逐艦の砲撃力を犠牲にして「防空駆逐艦」に改造する案も検討されたが、今さら後ろ向きすぎるとして退けられた。それよりも、より多くの砲火を迅速に叩き込むことによって、ミサイルを発射する敵艦そのものを素早く撃ち減らしてしまうべきだ。勇猛果敢な戦乙女たちは、そう結論づけた。
 このような経緯で新たに設計されたのが「ウィンドチェイサー」級コルベットだった。武装はX線レーザー砲よりも安価で省エネのレールガンに置き換えられ、防御の方はというとシールドどころか装甲板も皆無。それにより、ジェネレーターも低出力のものにダウングレードしている。これらの改良(というか減質)により、造船コストと維持費は従来の80%以下に抑えられていた。いわば、完全な安物だ。
20180930232341_1.jpg
 「とにかく数をそろえて、犠牲をいとわず相手をすり潰す。」それがヴァルキュリア帝国軍が選んだ道だった。同胞たちの流血を厭わぬ修羅の道である。“風追い鳥”という意味の可憐な名が与えられたこの新型コルベットに乗り組む新人クルーたちは、自分たちの艦のことを、公式名称をもじって自嘲気味に“ウィドーメイカー(未亡人製造機)”と呼び合った。
 
 非情なる決意とともに、ヤル連邦との戦いは続く。全面戦争はまだ始まったばかりだ。
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